ケース記録の書き方・参考図書紹介『相談援助職の記録の書き方‐短時間で適切な内容を表現するテクニック』その3
目次

前回は、援助職がケース記録を書く際に意識すべき視点と、記録に盛り込むべき基本的なポイントについて整理しました。
「記録は大事だし、書かなければいけない」と分かってはいても、つい後回しになってしまう…。そんな経験をお持ちの方も多いかもしれません。しかし、ケース記録を作成することは、支援の質にも直結する大切な作業です。ケース記録を記入することは、自分の思考を整理し、客観的に振り返るためのプロセスでもあります。
ケース記録の役割が明確になると、「何を記録すべきか」が見えてきます。それによって、ケース記録を意識した支援ができるようになり、結果として日々の業務時間の使い方にも変化が現れてくるはずです。今回は、さらにケース記録を通じてどのように専門性を可視化し、他職種との連携や説明責任に活かせるかについて掘り下げていきます。
アセスメントと支援計画
福祉や支援の現場では、援助職ならではの視点で状況を把握し、「なぜそうなったのか」「他にどんな可能性があるのか」「なぜ他の選択肢を選ばなかったのか」といった点を考察・言語化する力が求められます。アセスメントは、単なる記録ではなく状況を把握した上で、他職種とも共有できるようにするための大切なプロセスです。そして、そこから導き出された情報をもとに、適切な支援計画を立てていくことが、支援の質を左右します。
こうした専門的な記録を効率よく行うには、クラウド型支援記録システムの活用が有効です。アセスメントの質を高め、チームでの情報共有をスムーズにすることで、より一貫性のある支援が可能になります。
サービスの提供
対人援助サービスは、目に見える「形」が残りにくいため、ケース記録はサービスの提供内容や支援の質を伝えるうえで、非常に重要なツールとなります。
援助職による専門的な支援は、利用者本人にとっては分かりづらいことも多く、ときには本人が「困りごと」や「課題」として自覚していないケースもあります。そのため、「何を目指して、どのような支援を行っているのか」を共有することが難しくなる場面も少なくありません。
だからこそ、「支援が、裏付けられた専門的なサービスであることを記録に残す」ことが重要です。ケース記録は、支援の根拠や目的を可視化し、チーム内や他職種間、そして必要に応じてご家族とも共通理解を深めるための基盤となります。
サービスの継続性と調整
福祉支援においては、複数名の援助者がチームとして関わることが一般的です。この場合、各専門家が自分の領域のサービスを適切に提供していることを証明するためには、他の支援者の領域との間にオーバーラップやギャップがないことを確認する必要があります。これによって、支援の一貫性が保たれ、質の高いサービスが提供されます。
また、他の社会資源への紹介を行った際には、その後のフォローアップが欠かせません。紹介後に「紹介しっぱなし」にするのではなく、紹介の判断が適切だったかどうかを確認することが大切です。これにより、紹介を必要とする判断が正当であったことが証明され、支援の効果が高まります。こうした確認作業は、文書化することで初めて実施されたこととして記録に残ります。記録は支援の質を保証するために欠かせません。
また、援助者が自分より経験の多いスーパーバイザーと共に問題を把握し、確認しながら進めることもあるかと思います。その場合、介入のプロセスを記録することが重要です。これにより、支援の適切な進行と、問題解決の過程が後から振り返りやすくなり、支援の質向上につながります。
「かんたん支援記録カンタン支援計画」では、関係者アカウントを作成することで、保護者様や相談支援専門員、スーパーバイザーなどの関係支援者と支援記録の共有もかんたんにできます。また、特定のキーワードに「#」(ハッシュタグ)を設定すると、そのキーワードが含まれている記録のみを閲覧可能とすることもできますので、関係支援者への記録ごとの閲覧可否設定もかんたんに行えます。利用者の支援に効果的なワードにハッシュタグをつけて日々の記録を行うことで、短時間でも効果的に記録に目を通すことが可能になります。
援助職に求められる「説明責任」と記録の重要性
福祉支援やソーシャルワークなどの援助活動においては、提供するサービスが問題解決にどれだけ役立っているかを評価することが非常に重要です。この「評価」は、単なる援助者の自己満足ではなく、利用者にとって有意義な支援であることを証明するための手段となります。また、支援チームの他のメンバーに対しても、サービスの妥当性や効果を客観的に伝えることができます。
ここでいう「評価」には2つの視点があります。
1利用者自身による主観的評価
利用者が「支援によって自分の生活や気持ちが変わった」と感じられることは、支援の成果を示す重要なサインです。援助活動の目的が、利用者の自律性を高め、もともと備わっている問題解決能力を引き出すことにある以上、利用者の主観的な満足度や実感は不可欠です。
2援助者や他の関係者による客観的評価
利用者の行動や状況の変化を第三者の視点から捉えた評価です。これは、サービスの客観的な効果を測る手段であり、支援の妥当性や継続の必要性を裏付けるものとなります。
客観的評価を利用者にフィードバックすることで、問題解決や社会機能の改善に向けたモチベーションの向上にもつながります。さらに、これらの評価を記録として文書化しておくことは、今後の支援計画やサービスの質を高めるうえで不可欠です。記録によって、サービスの効果と正当性を客観的に証明できるため、継続的な支援を提供する必要性や根拠を関係者に示すことが可能になります。
活用のヒント:「かんたん支援記録カンタン支援計画」には、自然にサービス提供のプロセスの循環を生み出す工夫があります。支援の質を継続的に向上していくために有効です。
利用者、所属機関、他のサービス提供者、監査機関への説明責任
近年、ソーシャルワーカーや福祉専門職などの援助職の専門性が多職種からも広く認められるようになり、それに伴って説明責任(アカウンタビリティ)がますます重要視されるようになっています。では、その説明責任を果たすべき「相手」とは誰になるのでしょうか?
まず第一に、サービスの受け手である利用者本人、そして場合によってはその家族や代弁者に対して、支援の内容や意図が明確に伝わるように説明することが求められます。利用者の納得や安心を得るためには、分かりやすく丁寧な情報提供が不可欠です。
次に、援助職が所属する施設・事業所や上司に対しても、業務内容や支援の状況についての説明が求められます。なぜなら、もし支援の中でトラブルや損失が発生した場合、最終的な責任を負うのは一援助職ではなく、所属機関や管理者になるためです。したがって、上司や組織は常に現場の状況をタイムリーに把握できる状態であることが望まれ、そのためにも適切な記録の作成と共有が重要になります。
多職種が連携して支援を行うチームアプローチが主流の福祉現場では、支援内容の情報共有に齟齬が無いことが非常に重要です。認識のズレは支援の質を下げ、利用者に不利益をもたらす可能性もあります。記録を通じてお互いの業務内容を明確にし、チームとしての理解を深めることが重要です。
援助職としての業務が社会的に成熟していくにつれ、社会からの信頼や期待、果たすべき責任は増加していきます。しかし、的確かつ効率的な記録の作成ができれば、これらの説明責任を果たすことは決して難しいことではありません。むしろ、質の高い記録は支援の根拠となり、信頼を高め、チーム全体の支援力を向上させる基盤になります。
記録業務はただの「付け足し」ではない:支援の質を高めるための戦略的ツールとしての活用
ここまで、ケースワークのフレームに沿って、それぞれの段階で記録が果たす役割を見てきました。記録は「業務の終わりにまとめる付け足し」と捉えられがちですが、援助職にとっては支援の質を高め、専門性を裏づける重要な業務の一つです。ケースワークにおけるアセスメント・計画・実施・評価といった各段階で、記録は支援の根拠や思考のプロセスを可視化し、他職種との連携やチーム内の情報共有、説明責任の遂行にも不可欠な役割を果たします。
また、記録を記入することで支援の目的や方針を整理でき、業務を体系的にとらえる視点が養われますが、より効果的に、効率的に記録業務を進めるために役立つツールがクラウド型記録システムの「かんたん支援記録カンタン支援計画」です。福祉現場での「記録の質」はそのまま支援の質につながるとも言えますので、記録を単なる報告業務とせず、援助職としての専門性を発揮するための戦略的ツールとして活用することで、より効果的で継続的なサービス提供が可能になります。
記録の価値を再認識することで、日々の業務がより戦略的かつ効果的なものになりますね。「かんたん支援記録カンタン支援計画」の「概要と目的」をご一読の上、ぜひ一度ご試用頂ければ幸いです。