その支援記録、「書くだけ」で終わっていませんか?福祉現場の記録を「資産」に変える『MSE』活用法
「毎日の記録業務に追われて、支援に集中する時間がない…」
「支援員によって記録の質がバラバラで、カンファレンスでの情報共有がうまくいかない…」
「せっかく書いた記録が、次の支援に活かされている実感が持てない…」
障害福祉の現場で、このような悩みを抱えていませんか?
日々のケース記録は、利用者一人ひとりに質の高い支援を届けるための土台となる、いわば「未来への資産」です。しかし、その重要性を理解していても、多忙な業務の中で記録を効果的に活用できていないのが現実かもしれません。
この課題を解決する鍵は、支援員の「主観的な印象」を、チームで共有できる「客観的な事実」へと変換することにあります。 そのための強力なフレームワークが、今回ご紹介する「メンタルステータスエグザム(MSE)」です。
なぜ「客観的な記録」が必要なのか?
例えば、「Aさんは今日、落ち着いて過ごされていた」という記録があったとします。この「落ち着いて」という言葉の解釈は、支援員によって様々です。ある人は「穏やかに談笑していた」と捉え、別の人は「ほとんど発語なく静かに座っていた」と捉えるかもしれません。
このような主観に頼った記録では、支援の方向性にズレが生じたり、利用者の僅かな変化を見過ごしてしまったりする危険性があります。
そこで重要になるのが、誰が見ても同じように利用者の状態を理解できる「共通の物差し」です。

チームの「共通言語」となるMSE(メンタルステータスエグザム)とは
MSE(メンタルステータスエグザム)は、日本語で「精神状態の査定」と訳され、もともとは医師が利用者の心理状態を客観的に評価・記録するために用いる手法です。
しかし、その「現象の捉え方」は、職種を超えたチーム支援が不可欠な福祉現場において、非常に有効な「共通言語」となります。
MSEにはいくつかの評価項目があり、これらを意識することで、面接や日々の関わりの中で「どこを観察すべきか」「何に着目すべきか」という視点が明確になります。 これにより、経験の浅い職員でも、ベテランと同じように質の高いアセスメントに基づいた記録を残せるようになります。

支援の質を高めるMSEの項目
各項目で「何を見るか」だけでなく、「なぜ見るのか(どのような支援に繋がるか)」という視点でポイントでアセスメントします。
- 外見・身だしなみ
服装や衛生状態は、セルフケア能力や生活意欲の変化を客観的に示す指標です。日常生活動作支援の必要性を判断する材料になります。 - 行動・運動機能
落ち着きのなさ、過度な静けさ、特徴的な仕草など。精神的な安定度を測り、環境調整や関わり方を検討する上で重要です。 - 話し方
話す速度、声のトーン、流暢さなど。コミュニケーション能力だけでなく、思考の速さや感情状態を把握する手がかりになります。 - 思考過程
話のまとまりや飛躍がないか。認知機能の変化や精神的な混乱を早期に察知し、専門職への相談や支援方法の調整に繋げられます。 - 思考の内容
強いこだわり、被害的な内容、非現実的な訴えなど。背景にある不安やストレスを理解し、適切な 傾聴や共感、時には専門的な介入の必要性を判断します。 - 知覚障害
幻聴や幻視などの有無。本人の安全確保や、医療との連携を検討するための重要な情報です。 - 面接時の態度
協力的、反抗的、無関心など。支援者との関係性や、コミュニケーションへの意欲を評価し、関わり方を工夫するヒントになります。 - 感覚・意識と見当識
意識レベルは清明か。時間、場所、人物を正しく認識しているか。認知機能や身体状態の変化を知るための基本情報です。 - 利用者の報告による気分
本人が「楽しい」「つらい」など、どのように感じているか。本人の主観的な世界を理解する第一歩です。 - 援助者の観察による感情・情緒
本人の訴えと、表情や声色などの客観的な様子が一致しているか。感情の波や適切性を見て、精神的な安定度を評価します。 - 知能
会話の内容や理解力から、年齢相応の知的機能が保たれているか。複雑な指示の理解度など、日々の支援 内容を調整する参考になります。 - 洞察力
自身の状態や課題について、どの程度理解しているか。支援への動機付けや、自己決定を支えるための アプローチを考える上で重要です。 - 判断力
自身の言動がもたらす結果を予測し、行動をコントロールする力。社会生活上のリスクを評価し、必要 なサポートを検討します。
TIPS : 各項目に「 #判断力 : 」などのような形で # を付けておくと、その項目に主眼をおいた、生成AIによる「要約とアドバイス」をかんたんに得られますので、支援経過分析の際に便利です。
MSEを「かんたん」に実践し、「記録を資産に変える」には?
「たくさんの項目を覚えるのは大変…」「毎日これを意識して記録するのは無理…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
その通りです。優れたフレームワークも、現場で無理なく実践できなければ意味がありません。 そこで、ICTの力が役立ちます。 「かんたん支援記録カンタン支援計画」は、これらのMSEの視点も、日々の記録業務にスムーズに組み込めるように設計されたシステムです。
【Point 1】 テンプレート機能で、記録の質を標準化
MSEの項目をあらかじめテンプレートとして登録。 これに沿って入力するだけで、誰でも・いつでも観察のポ イントを漏らさず、質の高い記録を作成できます。 新人職員のOJTにも最適です。
【Point 2】 ハッシュタグで、情報の検索・分析が自由に
「#不穏」「#独語」など、気になる状態をハッシュタグで記録。 タグ をクリックするだけで、特定の状態の変化を時系列で追い、支援計画の見直しや効果測定がデータに基づいて行えます。
【Point 3】 グラフ機能で、変化を「見える化」
特定の行動の頻度などを「感覚」ではなく「数値」として記録し、グラフで可視化。「なんとなく増えた」が「週に3回から5回に増えた」と客観的に把握でき、ご家族や関係機関への説明にも説得力が増します。
MSEという「共通の物差し」と、それを支えるICTツール。この2つを組み合わせることで、日々の記録業務は単なる「作業」から、チームの支援力を高める「創造的な業務」へと変わります。
「かんたん支援記録カンタン支援計画」で、記録を本当の意味での「資産」として活用し、利用者様一人ひとりへ、より質の高い支援を届けませんか?


