ケース記録の書き方・参考図書紹介『相談援助職の記録の書き方‐短時間で適切な内容を表現するテクニック』その2
「記録を資産」として活用し、福祉サービスの本質的価値を、持続的に高めていくための「基盤」は、すばやく安価に「かんたん支援記録カンタン支援計画」で構築できますが、その基盤の上で「どのように書くべきか」という「ケース記録の書き方」を学ぶことも重要です。
この記事では、書き方の参考となる文献を紐解いていきたいと思います。
前回は、記録というものについて書かれている著書、『相談援助職の記録の書き方-短時間で適切な内容を表現するテクニック』から、ケース記録の目的や歴史的な背景について要約しました。
今回は、その続きとして、支援者がどんな視座でケース記録を記入していくべきかということと、ケース記録に盛り込むべきポイントについての要約です。
「簡単に、即座に記録情報を共有できる」ことで、「記録情報の価値向上」や「支援力の向上」などにもつながりますが、記録作業についても、各種テンプレート機能などを活用して、記録時の「効率」と「精度」を上げていきましょう。
それでは、「支援の質の向上」に活かせる記録の書き方について、いっしょに学んでいきましょう。
援助職に求められる責任と義務
ケース記録について考える前に、支援する中でどのような心持ちでケース記録に向き合うべきなのでしょうか。援助職の場合、法律上における義務と利用者を保護する責任という2つの点においての優先順位付けは難しいことですが、個人情報の保護についてと、利用者もしくは公共の安全が確保されているかどうか、というところはポイントになるかと思います。
また、個人情報保護という観点からは日本では、平成17年に個人情報保護法が施行され、プライバシー保護の意識が高まりました。日本の場合、援助職にはそこまで大きな責任は求められていないかもしれませんが、今後、場合によっては援助職が作成した記録が取り上げられる可能性も無いとは言えません。
援助職に求められている責任と義務をおさえた上で、では記録にはどのようなポイントで記入していけばよいのでしょうか。次に内容や、用語選択、記録の保管方法などについて要約していきます。
記録の内容
記録の内容・説明責任を果たす視点で、必要な情報を記録する。
ケース記録は援助職にとって、自分が提供したサービスが適切な内容であったことを証明するものです。チーム支援として考えた場合、他業種と連携したり、援助職同士で対応を依頼するときには、それまでのサービス内容を共有することも大事です。それと同時に、行った支援の判断の根拠を記録に残す必要があります。
活用のヒント : 「かんたん支援記録カンタン支援計画」の場合、利用者さんの支援記録を、他組織の支援者(例えば相談支援専門員さん等)と共有するといった機能を使うことも可能です。限られた時間の中での情報共有がスムーズに行うことができ、効果的なチーム支援に役立ちます。
記録の内容・特別対応について書きすぎないようにする。
必要な情報をケース記録として残そうとする場合、注意したいのが緊急対応時などです。記録を書くことも、書かないことも、第三者からは必要性について考えられた結果と受け止められるので、必要な情報にしぼって文字に残すことは援助職にとって大事な技術になります。
活用のヒント : 「かんたん支援記録カンタン支援計画」では、最新の個別支援計画等も簡単に確認できますが、さらに、この個別支援計画内の「支援目標となるキーワード」に、 # ( ハッシュタグ ) をつけ加えておくだけで、支援記録の記入時に「計画キーワードボタン」として毎回表示されるようになります。
これにより、支援員は記録情報から目標ごとに支援実施内容を抽出できるだけでなく、自然と記録すべきポイントを頭に入れて日々の支援に入れますので、統一した支援が行いやすくなります。
記録の内容・第三者に関する記載、家族介入の記入方法に十分注意する。
もし記録に利用者の家族や友人等、第三者のことについて書いてしまっていたとするならば、支援対象がぶれていることにつながります。
言い換えれば、支援のプロである以上、どなたと支援の契約を結んでいるのかを意識し、ケース記録もその視点に沿った形での記録をしていくわけですね。
表現と用語選択で気をつけること
明確で具体的な表現をする。:ケース記録は自分以外の人に読まれることが前提ですので、心理的な内容はあいまいな表現になりがちですので避け、わかりやすく具体的な表現をすることが大事です。
専門用語、略語は避ける。:現象を具体的に文字化したほうが、理解されやすいため、ケース記録作成の際には専門用語や略語は極力避けましょう。
的確な表現をする。:書き手が意図しなくても、読み手によって受け止め方はさまざまです。ケース記録作成の際には主観的であいまいな表現を避け、伝えたいポイントだけを的確に表現するように気をつけましょう。
つまりケース記録に求められているものとは、『わかりやすく具体的な表現』『略語と専門用語を避ける』『伝えたいポイントだけを押さえた的確な表現』ということですね。
記録の信頼性・タイムリーな記録作成をする。
ケース記録は、援助職が残せる唯一のサービスの証拠です。しかしそうはいっても、記録そのものは脚色も改ざんすることも簡単です。そのためのポイントのひとつが、記録を適切なタイミングで残すということです。
もし緊急事態が発生したときは事態が収束したあとに、できるだけ早くサービス提供に必要な情報だけを判断して効果的に記録に残すということが期待されています。仮に手書きで記録する場合は、後でとついつい記録を溜めてしまうことがあります。しかし人間の記憶はいい加減なので、時間が経ってから前のことを正確に記録するのはとても大変です。
活用のヒント : 時間が経過して記憶が曖昧になってしまう前に、その場でスマホを利用して要点だけでも記録しておくことも可能です。内容を思い出すための時間をなくし、記録作業の時間短縮にも繋がります。
記録の信頼性・専門家らしい文書作成を心がける。
援助職が扱う課題はについてはあいまいなことや憶測は極力書かないで、どこまでが事実として確定していることで、どこからが自身の所見であるかが明確に区別できるような記録を作成することが重要です。
記録の信頼性・真摯な姿勢で取り組む。
これだけいろいろと注意することがあると、当然間違えて文字に残す事も出てきます。そういったときに気をつけたいのが、誤りや失敗を率直に受け止め、事実に基づき端的に明確に記録することが望ましいということです。
記録へのアクセス・記録の保管方法を確立する。
記録に関して、作成方法と同じかそれ以上に重要なのが誰がその記録を見ることができるようにするかの管理方法です。記録へのアクセスの管理方法を決めることによって、利用者からの信頼性を高めて効果的に支援できるようにする、ということが重要なことになります。
活用のヒント : 「かんたん支援記録カンタン支援計画」では支援職員の職務内容や所属サービスによって記録閲覧や記録書き込みの権限をあらかじめ決めておくことができます。(それぞれの端末のパスワード管理の重要性については言うまでもありません。)
記録へのアクセスの管理方法と情報開示の手順を確立する。
記録に書かれている情報自体は利用者の情報ですが、文字として記録に残した段階で、その記録は作成者の所属組織のものになります。専門家が知見に基づいて妥当とする情報開示の手段を決定し、それを前もって利用者に説明し、同意を得ていれば、記録開示の依頼があった場合でも、それなりの時間的な余裕を持つことが可能です。
裏書面を残すリスクを理解する。
メモ書きを残す場合、まずはそれが公式な文書になりうることを認識することが必要です。その上で注意する点は以下の2点です。
1、残したくない、あるいは残せないような情報が本当に援助活動に必須かどうか。
2、援助職の仕事は、その時目の前にある情報をもとに的確な判断を下すことで、利用者の話を覚えておくことが仕事ではない。
問題はあくまでも利用者自身が解決すべきもので、詳細を本人が語ることで自分で解決していこうという意識を高めることもできます。
活用のヒント : 「かんたん支援記録カンタン支援計画」ではスマホやタブレットを利用して、必要とあれば支援中にもタイムリーにスムーズに記録することができるので、メモ書きでの伝達も減らすこともできます。
ここまで、支援者がどんな視座でケース記録を記入していくべきかということと、ケース記録に盛り込むべきポイントについて参考図書の要約をしてきました。より良い支援のために「かんたん支援記録カンタン支援計画」を上手にご活用頂ければ嬉しく思います。